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地獄の教習所事件

ちょっと前に自動車免許の更新の
手紙がきました。
実は私も免許持ってるんです。
ATだけど。いや十分、十分です。
人生において全くの不足なし。
けれどATでも取るの大変でした。
あれは初めて路上教習に
出た日のことですね。
今までは教習所内の模擬道路みたいな
ところで運転練習するわけですが
ある程度経ったら巣立たされるんですよ。
で地元の道路の車線の狭さったらないわけ。
ほんと車1台でいっぱいいっぱい。
コンパクト車線。
加えて交通量も多いという
初陣にしちゃレベル高いとこなんですよ。
ベリーハード設定されてる教習所。
でも隣に教官もいますから
そんなビクビクするこたないんですけどね。
支持に従ってれば大丈夫です。
教習時間開始。
教習車の助手席で待ってると
運転席側のドアがガチャッと開いて
ゲートボール上手そうなおじいちゃん教官が
乗ってきた。
俺「よろしくお願いします~」
教官「ふぁいふぇれひゃあかみふらはい」
暗雲たちこめたよね。
もう全っ然、ぜんっぜん
なんつってるかわかんない。
ベリーハードじゃなかった。
エクストリームだここ。
は行でしか喋れない
縛りプレイしてんのかなってくらい
は行の酷使。は行も喜んでると思う。
SAWで死のゲーム受けさせられて
ルール説明担当がこの人だったら
確実に死ぬだろうなーって思った。
もれなく死ぬ。
俺が赤ちゃんみたいに
「あうあう」言ってると
おじいちゃんが俺の持ってる紙
指差してきた。
ああ!渡すのか!と
すぐさま理解して手渡す。
教習所は毎回初めに
チェック表みたいなのを
教官に渡すんですよ。
もう動作で読み解くしかない。
でおじいちゃん教官の運転で
ひとまず路上へ。
ある程度のところに
行ったら交代して
教官の支持通りに
道を進んで行く。
この恐ろしいナビで。
んで交代していざ運転ですよ。
「ふぁいふぉれひゃ
ほっつへのひんほうをひーひまはりまひょう」
必死に頭の中で組み立てた。
恐らく
「はい、それじゃ4つ目の信号を右に曲がりましょう」
だなと全神経を研ぎすませた耳が導く。
その姿はさながらサミットで各国首脳のスピーチを
喋ると同時に訳していく通訳の如し。
1つ1つ信号を通過して行く。
何も言わないおじいちゃん。
ビンゴ!
俺の爺訳(おじいちゃんの通訳)は合ってた!
4つめの信号にさしかかり
おじいちゃんが
「ひゃい ほほひ◯×%$へ~」
冷や汗出たよね。
完全にわかんなかった。
必死に辞書めくったけど出てこなかった。
Siriの気持ちがわかったよね。
さっきの説明では恐らく
ここを右なんですよ。
でも今のセリフ量だと
左の可能性も浮上してきた。
迫られる選択。
やばいどうしよ!全然わかんない!
助けてドラえも~~ん!
でもそこでハッと
気付いた。
聞いちゃえばいいじゃんて。
光が差し込んだよね。
運命に打ち勝った。
「えっ右?右ですか?」
って聞いたらね。
「ふぇー」
だって。
小学生のリコーダーの音
みたいな返事。
ソ、かな?
合ってんのかわかんない。
「ええ(そうですよ)」なのか
「いいえ(違います)」なのかわかんない。
迫る信号。
漏れる情報。
ダメだー!!
もうなるようになれー!!つって
右にウインカー出して曲がろう
としたら
今までぐたーっとしてた
おじいちゃんが突然目をカッと見開き
俺のハンドルガッと掴んで
「左だよぉおおお!!!!!!」
喋れんのかい。
喋れんのかい!!
もうフロントガラス突き破って
飛んでっちゃいそうになったよ。
喋れんのかーい!って。
それかスパイ映画みたいに
天井開けて助手席
吹っ飛ばしたかったよね。
今まで片鱗すら見せなかった
流暢な日本語。
能ある鷹は爪を隠すなんて
良く言ったものですね。
でもここでやっちゃダメよ。
私はその後も何度も聞き間違えて
怒られましたとさ。